一級建築士製図試験で不合格になる人に共通して多いのは、エスキスを十分に検討していないのに作図に進んでしまうことです。
エスキスをしっかり行えていないと、作図に進んだ時に迷って手を止めてしまうおそれがあります。
そこでこの記事では、令和5年度一級建築士製図試験「図書館」で合格した著者のエスキスを手順を踏んでご紹介します。
こんな方にこの記事はおすすめ!
- 合格者のエスキスを見たい!
- エスキスの手順を知りたい!
- 合格者は何を考えて、プランをまとめているのかを知りたい!
この記事は下記の続きですので、まだ見られてない方は下記の記事をご覧になってからをオススメします。
≫「合格者のエスキス大公開! 令和5年度一級建築士製図試験「図書館」vol.1」はこちらから
エスキスの流れ
下記の手順で、エスキスを行いました。
課題文の読み取り
- 最重要項目のチェック(1回目)
- 課題文のマーキング(2回目)
条件整理
- アプローチの検討
- 建蔽率・容積率の確認
- 建築設備の想定
- 室における必要な面積想定
- 部門構成の検討
- 平面ゾーニング、断面ゾーニング
- 階の振り分け
- その他の施設等の検討
プランニング
- 建築物可能範囲の確認
- 高さ制限の確認(道路、隣地、北側)
- 建築物の配置位置、スパン割りの決定
- ボリュームの検討
- 中間チェック
- チビコマ(1コマ分)
- 倍コマ (2コマ分)
- 1/400の検討
- 最終チェック
Vol.1の記事では、「課題文の読み取り~条件整理」までを説明したよ!
今回の記事では、「プランニング」を説明するよ!
プランニング中に2回のチェック(中間チェック、最終チェック)を入れています。
このチェックをすることで、プランニングのミスが少なくなるので、とても重要です。
今回紹介するのは画像の「青枠」部分です。
プランニング
1.建築物可能範囲の確認
「その他の施設等」を考慮して、建築物可能範囲を検討しました。
現段階では、下記の建築物可能範囲となります。
- 西側にメインアプローチをとる : 6m空ける。(車椅子使用者用駐車場2台分)
- 北側・東側・南側:最低限の2m空ける。(敷地内通路:1.5m以上を考慮して)
2.高さ制限の確認(道路、隣地、北側)
「高さ制限」を確認し、セットバック距離を算出しました。
建築物の最高高さ(棟屋等を除く)
- 1・2階の階高:4.0mで計画
- 3階の階高 :5.0mで計画(一般開架スペースは、天井高さ3.7m以上必要なため)
- パラペット高さ:0.6mで計画
建築物の最高高さ:0.1m+4.0m+4.0m+5.0m+0.6m=13.7mとなりました。
斜線制限の確認
道路幅員が短い「南側道路斜線制限」、「北側斜線制限」の2方向の検討を行いました。
※「西側道路斜線制限」は、道路幅員が12mと余裕があるため、検討は省略しました。
棟屋や設備スペースを建築物の中央に配置することで、南北方向の斜線制限に抵触しないように計画しました。
3.建築物の配置位置、スパン割りの決定
建築物の配置位置
「その他の施設等」と「高さ制限のセットバック距離」から建築物の配置位置を決定しました。
- 北側:4.0m空ける(北側斜線に抵触しないために)
- 西側:6.0m空ける(車椅子使用者用駐車場が2台計画できるために)
- 南側:3.0m空ける(南側斜線に抵触しないために)
- 東側:2.0m空ける(敷地内通路:1.5m以上を考慮して)
スパン割りの決定
建築物の配置位置より、X方向の長さ:40m、Y方向の長さ:28mに決定しました。
各室の必要面積が「50m以上」「100m以上」「150m以上」と50の倍数以上が多かったことから、1スパン56㎡となる下記のスパン割りで決定しました。
- X:8m×5スパン = 40m
- Y:7m×4スパン = 28m
4.ボリュームの検討
「必要面積の合計」×1.4(廊下や便所等を考慮した係数)が 「床面積」より小さいかチェックしました。
3層同面積で計画したため、1~3階まで床面積が1,120㎡となりました。
必要面積の合計は、1F:630㎡、2F:620㎡、3F:700㎡に設定しています。(条件整理-7.階の振り分けより)
計算した結果、床面積を上回ることがなく、余裕を持った計画ができることが分かりました。
廊下や便所等を考慮した係数を1.4と設定しましたが、自分でエスキスをしていく中で、値を判断してみて下さい。
係数の値が大きくなると余裕のある計画になります。
5.中間チェック
「建築面積」「延床面積」を算出し、建蔽率・容積率に適合しているかチェックをしました。
- 建築面積:1,120.0㎡ ≦ 1.340.0㎡ OK
- 延床面積:1.120.0㎡ × 3 = 3,360.0㎡ ≦ 5,040.0㎡ OK
また「高さ制限」に適合しているかチェックをしました。
私は、試験当日この中間チェックで北側斜線に引っかかっていることに気づきました。
ここでチェックすることで修正を最小限に抑えることができます!
6.チビコマ(1コマ分)
エスキス用紙の1コマ分を1スパンと考え、大きい面積を占める「一般開架スペース」「児童開架スペース」等の位置を決定し、「展示部門」「管理・共用部門」の大まかな配置を決定しました。
7.倍コマ(2コマ分)
エスキス用紙の2コマ分を1スパンと考え、中程度の面積を占める「閉架書庫」「企画展示スペース」等を配置しました。また、階段・EV(エレベーター)の位置を決定しました。
「室を配置するコツ」は、敷地の周辺条件を考慮しながら、床面積が大きい部屋から配置することです。
8.1/400の検討
縮尺:1/400ですべての部屋を計画します。
色分けをして、視覚的に分かりやすくしました。
- 赤:建具・特定防火設備
- 青:PS・DS・EPS
- 緑:屋外施設、必要な室・什器
- 太赤:延焼ライン
- 太青:断面図の切断位置
図面と同じレイアウトで1/400を検討すれば、作図するときにミスが起きにくくなります!
このようにまとめることで、「作図」に移行した時に課題文を読まずに作図をすることができ、最短2時間で作図を完成させることを可能としました。
≫【最短2時間二刀流製図法(平行定規+フリーハンド) 一級建築士製図試験】はこちらから
9.最終チェック
最後に課題文と照らし合わせて、最終チェックを行いました。
まとめ
2つの記事で、自己流のエスキスを話していきました。皆さんの参考になっていれば、嬉しいです。色々な方のエスキスをぜひ見ていただいて、自分の型を見つけていって下さい!
これにてエスキス編は終わり、下記に令和5年度(2023年度)一級建築士製図試験「図書館」のまとめ記事を示すからぜひ見に来てね!
「課題文の読み取り」「計画の要点(記述)」「合格図面」について掲載してるよ!
最後に…使用した道具紹介
- 折りたたみ縮尺スケール8面 15cm
従来の三角スケールは、「カバンの中でかさばる。材質が硬いため、製図版に落とすと傷がつきやすい。」という特徴があります。
折りたたみ縮尺スケールは、「折りたためてポケットに収納できる。柔らかい素材で製図版を傷つける心配がない。」という特徴があります。
15cmタイプと30cmタイプの二つがありますが、エスキスには「15cmタイプ」がオススメです。
- フリクションボール4
4色(赤、青、緑、黒)のボールペンが1つで済むため、持ち替えなくてもよくなり、とても便利です。
1/400を計画するときに必須のアイテムです!
コメント